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詐欺グラフとは?実例から学ぶ騙されない方法を解説

森本 恭平更新 約4分
詐欺グラフとは?実例から学ぶ騙されない方法を解説
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単に数字を並べるのではなく、そこに込められる意味を伝わりやすい視覚情報として表現するために、グラフを日常的に使っている人たちもいるはずです。どんな見せ方をしても元の数字に変化はありませんが、デザインで事実を捻じ曲げるケースが存在します。それが「詐欺グラフ」です。

数字を細かく見る習慣のない人たちにとっては、色や大きさなどのぱっと見の印象で誤解することもあるかもしれません。その結果、間違った意思決定を下すと大損失を被るおそれがあります。だからこそ、デザインと実態のギャップを見抜くために、「どのようなごまかしがあるのか?」を把握しておくのは有意義だと思います。

この記事では、詐欺グラフに関する概要をまとめています。是非、参考にしてみてください。

詐欺グラフとは?

詐欺グラフのイメージ

詐欺グラフとは、数字が示す実態とは異なる印象を与えるために作成されたグラフの総称です。ネット上では、「ウソグラフ」と呼ばれることもあります。情報を受け取った人に誤解を与える意味では、ダークパターンの1種であると言えます。

詐欺グラフが生まれるのはなぜ?

詐欺グラフが生まれるのは、情報発信側にとって都合の良い説明を成立させるためだと考えられます。すなわち、あらかじめ結論が決まっており、その根拠を数字を使って最もらしくするために、詐欺グラフが利用されることがあるのです。

詐欺グラフを含む統計やアンケートなどの数値が示す意味を恣意的に歪める行為は、適切な意思決定を阻害する由々しき問題です。目先の打ち合わせでその場を凌げたとしても、中長期的には実態から逸脱した解釈に基づく判断を生み出すので、組織全体に致命的な打撃を与える失敗を招くおそれがあります。

歴史にしても、数字にしても、情報は作る側の恣意性が必ず反映されます。何を加えて、何を差し引くのか。その取捨選択は作る側が支配しています。その解釈が目的に寄与するために用いられるのか、それとも都合の悪いことを隠すために使われているのか、受け取る側は見抜かないといけません。

また、詐欺グラフを使う側のリスクもひと昔前よりもはるかに高くなっています。なぜなら、一度、ビジュアライズされた表現は端末に保存されて、それがSNSなどで拡散する可能性があるからです。あなたの大切な人生史に「詐欺グラフを使う側」というデジタルタトゥーが残ったとしたら、キャリアに大きな傷がつくでしょう。

詐欺グラフの具体例

それでは、詐欺グラフには、どのような形式があるのでしょうか?

ここでは、実例を踏まえた上で、特にややこしいものに特化して具体例を紹介します。

具体例1 グラフを0から始めない

STEP 1 この1枚を見て、どう感じますか

顧客満足度は4期連続で上昇

当社サービスの利用者アンケート

47.548.048.549.049.5顧客満足度(%)第1期:48.0%48.0%第1期第2期:48.6%48.6%第2期第3期:49.1%49.1%第3期第4期:49.8%49.8%第4期例示

当社調べ(数値は例示)

STEP 2 同じ数字を 0 から描くと

050100%第1期:48.0第1期第2期:48.6第2期第3期:49.1第3期第4期:49.8第4期

4期で 1.8ポイント。ほぼ横ばいです。

上のグラフは縦軸を 47.5% から始めています。棒の長さが表しているのは「47.5 からの差」であって、値そのものではありません。そのため第2期の棒は第1期の 2.2倍の高さになります。実際の差は 0.6ポイントです。

見抜き方:縦軸のいちばん下の数字を読む。0 でなければ、棒の長さの比は意味を持ちません。

数値は仕組みを示すために作った例であり、実在の調査にもとづくものではありません。

具体例2 都合のよい期間を切り取る

STEP 1 この1枚を見て、どう感じますか

来場者数はV字回復

当施設の年間来場者数の推移

90105120年間来場者数(万人)2023年:94万人2024年:101万人2025年:112万人2023年2024年2025年94101112例示

数値は例示

STEP 2 10年分すべてを描くと

0100200万人2016年:182万人2017年:171万人2018年:160万人2019年:146万人2020年:131万人2021年:117万人2022年:105万人2023年:94万人2024年:101万人2025年:112万人201620202025

10年で 182 → 112万人。4割近く減っています。

上のグラフに嘘はありません。直近3年だけを見れば、たしかに 94 → 112万人へ増えています。ただし始まりの年を選んだのは書き手です。2016年から描けば、増加は下降のなかの小さな戻りにすぎません。

見抜き方:横軸の左端がいつかを見る。なぜその年から始まるのか、理由が書かれていなければ疑う。

数値は仕組みを示すために作った例であり、実在の施設にもとづくものではありません。

具体例3 母数を揃えない

STEP 1 この1枚を見て、どう感じますか

自転車事故が最も多いのは A市

近隣2市の年間発生件数

0350700自転車事故の件数(件)A市:624件624件A市B市:186件186件B市例示

数値は例示

STEP 2 人口10万人あたりに直すと

05010010万人あたり(件)A市:6464A市B市:8989B市

順位が逆転します。A市 64件、B市 89件。

A市の人口は98万人、B市は21万人です。人口が 4.7倍ちがう2つの市を、件数のまま並べていました。分母が違うものは、そのままでは比べられません。それでも件数のグラフは、そのことを何も語りません。

見抜き方:縦軸の単位を読む。「件」なのか「10万人あたりの件数」なのか。人口や母数が図のどこにも書かれていなければ、比較として成立していません。

数値は仕組みを示すために作った例であり、実在の自治体にもとづくものではありません。

具体例4 立体で大きく見せる

STEP 1 この1枚を見て、どう感じますか

シェアで当社は他社に肩を並べる

主要3社の市場シェア

当社 27%B社 33%A社 40%当社 27%B社 33%A社 40%例示

数値は例示

STEP 2 平面に直すと

当社 27%B社 33%A社 40%当社 27%B社 33%A社 40%

当社は 27%。3社のなかでいちばん小さい区画です。

上のグラフを傾けると、手前の区画には横から見た側面が加わります。奥の区画には付きません。このグラフで実際に塗られている面積を計算すると、当社 39.9%、A社 32.6%、B社 27.5% でした。27%の当社が、40%のA社より広く塗られています。

見抜き方:立体の円グラフは、数字が併記されていないかぎり読み取れないものとして扱う。手前の区画ほど大きく塗られるので、誰を手前に置くかを作り手が選べます。

塗られた面積は、上面の扇(楕円の扇形)と、正面を向く区画にだけ現れる側面を数値積分して求めました。数値は仕組みを示すために作った例であり、実在の企業にもとづくものではありません。

具体例5 都合の二重軸を使用する

STEP 1 この1枚を見て、どう感じますか

アイスが売れると、水難事故が増える

5年間の推移

02254503.04.05.0アイスの売上(左目盛り・億円)水難事故(右目盛り・千件)1年目:アイス売上 112億円2年目:アイス売上 168億円3年目:アイス売上 241億円4年目:アイス売上 318億円5年目:アイス売上 402億円1年目2年目3年目4年目5年目1年目:水難事故 3.1千件2年目:水難事故 3.4千件3年目:水難事故 3.9千件4年目:水難事故 4.3千件5年目:水難事故 4.8千件例示

数値は例示

STEP 2 1年目を100とした指数にそろえると

100250400売上事故1年目:1002年目:1503年目:2154年目:2845年目:3591年目5年目1年目:1002年目:1103年目:1264年目:1395年目:155

売上は3.6倍、事故は1.5倍。伸び方はまったく違います。

上のグラフは、左の目盛りを 0〜450、右の目盛りを 3.0〜5.0 に取っています。右だけ範囲を狭くすれば、2本の線はいくらでも重ねられます。重なりはデータの性質ではなく、目盛りの選び方が作ったものです。

見抜き方:左右に目盛りがあるグラフでは、それぞれの下端と上端を確かめる。片方だけ範囲が狭ければ、重なりは作られたもの。2つの量を比べたいなら、指数にそろえるか、グラフを2枚に分けます。

数値は仕組みを示すために作った例であり、実在の統計にもとづくものではありません。

具体例6単位と出所を隠す

STEP 1 この1枚を見て、どう感じますか

満足度は当社が業界No.1

主要3社の比較

A社:62A社B社:71B社当社:88当社例示

当社調べ(数値は例示)

STEP 2 単位と調査の情報を足すと

050100「満足」と答えた割合(%)A社:6262A社B社:7171B社当社:8888当社

「満足」と答えた割合は、当社 88%。ここではじめて比べられます。

上のグラフには、縦軸の数字も単位もありません。何の値なのか、いつ誰に何人聞いたのかも書かれていません。それでも棒の高さは残ります。検証できないのに、印象だけが伝わるのがこの型です。数字が正しいかどうか以前に、正しさを確かめる手がかりが渡されていません。

見抜き方:n(回答者数)・調査期間・調査方法・出典の4つを探す。ひとつでも欠けていれば、その数値は使わない。「当社調べ」だけの表記は、この4つのどれも満たしていません。

数値は仕組みを示すために作った例であり、実在の調査にもとづくものではありません。

詐欺グラフが騙されない対策

それでは、このような詐欺グラフに騙されないようにするには、どうすればよいのでしょうか?

第1に、詐欺グラフとして使われるパターンを知るのは有効だと思います。公式を当てはめるように、型を知ることで違和感を後天的に獲得できます。

半世紀以上も前に、アメリカの統計学者ダレル・ハフが『統計でウソをつく法』という本を出版しました。現在もなお、世界的なベストセラーになっているのは、悪意を持ち込む側の方法論を学ぶ知恵として有意義であるからだと思います。

第2に、生成AIを活用して資料に記載されている数値の妥当性を精査するのもよいでしょう。私が業務で実行している手順は以下のとおりです。

手順1 個人情報や秘匿情報をマスキングする。

手順2 Claudeに資料をアップして以下のように指示する。

メモ

「アップロードした資料の統計、アンケート、グラフなどの数字をもとに構成された情報について、読む側に誤解を与える使い方や作成者側にのみ都合のよい作り方がされていないかを厳しくチェックして、資料を提出した人に確認すべき項目をまとめてほしい。なお、資料の読み込みは要約ツールを使わずに、記載されているすべての情報を読み込んだうえで判断してください。」

手順3 確認項目を踏まえて資料を再度、読み直して論点を書き出す。

手順4 資料提出者に論点を確認する。

そのうえで、「この数値が何を説明しようとしているのか?」を資料提出側に確認することで、そこに用いられているダークパターンに気づく確率を高くできると思います。

情報は恣意的に作られる

あらゆる情報は、作り手の恣意性によって構成されます。テキストにせよ、動画にせよ、そこに示される事実は、だれかによって選定されたものです。その意味では、あらゆる情報が何かに偏っていると言えます。

もちろん、それ自体が悪いのではありません。そこに込められる意図が双方の目的に資するフェアなコミュニケーションを促進するのかどうかだと思います。

グラフは数値が示す情報を視覚的にわかりやすく表現する技法です。この「わかりやすさ」が複雑な事象を単純化するプロセスのなかで、誤解を生むことはあります。しかし、それを意図して作るのは、相手を馬鹿にする行為に違いありません。要は、「ごまかせる対象」と判断しているわけですから……。

そうなれば、もう信頼関係は二度と復活しないと考えるべきです。詐欺グラフに触れたときに、そこに惑わされないように注意してください。

出典

公的機関

総務省統計局「なるほど統計学園」より「グラフ作成の基本」 https://www.stat.go.jp/naruhodo/9_graph/kihon.html

消費者庁 新未来創造戦略本部 国際消費者政策研究センター「いわゆる『ダークパターン』に関する取引の実態調査」(2025年4月公表) https://www.caa.go.jp/policies/future/icprc/research_010/[]

書籍

ダレル・ハフ 著、高木秀玄 訳『統計でウソをつく法 数式を使わない統計学入門』講談社ブルーバックス B-120、1968年7月24日発行、223ページ(原著 Darrell Huff, How to Lie with Statistics, 1954。第5章「びっくりグラフ」、第6章「絵グラフの効用」ほか全10章) https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000128748

Edward R. Tufte, The Visual Display of Quantitative Information, Graphics Press, 1983/第2版 2001、197ページ(出版社による紹介に「Detection of graphical deception: design variation vs. data variation. Sources of deception.(作図上の欺瞞の検出。デザインの変動とデータの変動。欺瞞の源泉)」とある。訳は拙訳) https://www.edwardtufte.com/book/the-visual-display-of-quantitative-information/