
私たちが日常的に利用しているインターネットには、「ダークパターン」というユーザーに不利な選択をさせる欺瞞的なユーザーインターフェースが蔓延っています。そのひとつが「コンファームシェイミング」です。
果たして、具体的にどのような誤解を与えるUIなのでしょうか?
この記事では、コンファームシェイミングについて解説しています。具体例や効果の有無にも言及しているので、インターネットを利用している人たちは参考にしてみてください。
コンファームシェイミングとは?
コンファームシェイミングとは、罪悪感や羞恥心を抱かせる選択肢を表示することで、本人にとって不利な選択に誘導するダークパターンを意味しています。別名では「マニュピリンク」と呼ばれたり、日本語では「羞恥心の植え付け」や「感情のゆさぶり」と表現されています。

例えば、メルマガの登録に関するインターフェースで「お得なお知らせを受け取りますか?」という質問があったとしましょう。通常ならば、「受け取る」と「受け取らない」というシンプルな2択が表示されます。ここにコンファームシェイミングが反映されると、「受け取らない」ではなく「いいえ、損をしてもかまいません」といった自分で愚かな選択をしているかのように感じさせる設計が実装されるわけです。
コンファームシェイミングの具体例
それでは、コンファームシェイミングには、どのようなものがあるのでしょうか?
ここでは、実例をもとに具体例をいくつか紹介します。
コンファームシェイミングに効果はあるのか?
とはいえ、実際に、コンファームシェイミングによって、ユーザーがネガティブな選択を取ることはあるのでしょうか?
結論から言えば、コンファームシェイミングは人々の選択に悪影響をもたらします。
シカゴ大学ロースクールの Strahilevitz と Luguri はアメリカの成人3,777名を対象に実験を行いました。具体的には、回答者に対して「あなたの郵送先住所を特定した」と伝えた上で、1か月無料・その後は月額 8.99ドルが課金されるデータ保護プログラムについて、断るボタンの文言だけを「データや信用履歴を守ることに関心がありません」という感情にゆさぶりをかける選択肢を実装しました。
その結果、何もない画面が1,289名中191名(14.8%)、コンファームシェイミングの画面が 612名中120名(19.6%)が承諾しました。わかりやすい数値に還元すると、前者が100名中およそ15名が承諾したのに対して、後者では100名中およそ20名が承諾したことになります。
「悪手が勝る」という結果が出たのは絶望的なように思えるかもしれませんが、ダークパターンの採用は非合理的だと思います。
というのも、欺瞞的なデザインで契約を強制する行為に気づいた人たちが、その不満をSNSなどのインターネット空間に投稿する可能性があるからです。近年では、利用金額の表示形式を発端として炎上したケースもあります。
すなわち、ダークパターンの採用は、短期的な効果と引き換えにすべてが台無しになる経済的リスクを常に抱えることになります。
一見すると、人々の心理をコントロールするのは楽かもしれません。けれども、そのプロセスからは、商品やサービスの品質で勝負する風土が失われていきます。最終的には、金儲けのためだけにその場を凌ぐことしかできなくなるのではないでしょうか。
「自分を責めているのか?」を問う
コンファームシェイミングが動かしているのは、納得ではなく、断りにくさです。「いいえ、損をしてもかまいません」という一文は、断るという行為に自己否定の意味を足し、選ぶ手を止めさせます。本文で見た実験でも、断るボタンの文言を変えただけで承諾率は動きました。
注意したいのは、その力が働いている最中には、それが見えにくいことです。あとに残った不快さは、自分の判断が鈍かったからではなく、断る側の選択肢がそう書かれていたからかもしれません。
だからこそ、気づくことが最初の防御になります。具体的には、選択する前に、断る側の文言が「自分を責めていないか?」を確かめてみてください。近い将来、ダークパターンに規制をかけられたとしても、すべてを網羅できるとは限りません。その意味では、一人ひとりが騙されない術を見つけるしかないのです。
※Orbix Studioでは、デジタルとの適切な距離を実現するために、それに資する研究を行っています。その一環として、ダークパターンについて解説する記事をつくっておりますが、「悪手に関する情報を公開することで、かえって用いる人たちが増えるのではないか?」という疑念を持つ方もいるかもしれません。
はっきり言えば、悪用のリスクが存在することを認めなければいけないと思っています。
しかし、悪いことを考える人たちは、どのような手段を使ってでも、ダークパターンにたどり着くでしょう。近年では、生成AIのリサーチ能力はアカデミックなレベルで有用なものになっていますから、よい情報も悪い情報も簡単に手に入ってしまいます。
だからこそ、Orbix Studioでは、モラルの観点はもとより、その悪手に内在する非合理性を検討しながら、ダークパターンの利用やそれに伴う誤解を防止するためにできることを探していきたいと思っています。
現在、開発工房の取り組みとして、生成AIを使って特定のサイトに潜むダークパターンの導入率を可視化する仕組みなどを検討しております。気になる方はお知らせなどの情報をチェックいただけますと幸いです。
出典
公的機関
消費者庁 新未来創造戦略本部 国際消費者政策研究センター「いわゆる『ダークパターン』に関する取引の実態調査」(2025年4月公表。リサーチ・ディスカッション・ペーパー。調査対象:国内の通信販売サイト102件、2024年5〜9月、調査者がPCとスマートフォンで購入直前まで操作・記録。「インターフェース干渉」の一項目として「感情のゆさぶり」を定義)https://www.caa.go.jp/policies/future/icprc/research_010
European Data Protection Board, Guidelines 03/2022 on Deceptive Design Patterns in Social Media Platform Interfaces: How to Recognise and Avoid Them, Version 2.0(2023年2月。「Stirring」の下位項目「Emotional Steering」として定義。GDPR 第5条(1)(a) および第25条に結びつけている)https://www.edpb.europa.eu/documents/guideline/guidelines-032022-on-deceptive-design-patterns-in-social-media-platform_en
学術文献
Luguri, J. & Strahilevitz, L. J. "Shining a Light on Dark Patterns," Journal of Legal Analysis 13(1), 2021, pp.43–109. DOI: 10.1093/jla/laaa006
Mathur, A., Acar, G., Friedman, M. J., Lucherini, E., Mayer, J., Chetty, M. & Narayanan, A. "Dark Patterns at Scale: Findings from a Crawl of 11K Shopping Websites," Proc. ACM Hum.-Comput. Interact. 3(CSCW), Article 81, 2019. DOI: 10.1145/3359183
Gray, C. M., Kou, Y., Battles, B., Hoggatt, J. & Toombs, A. L. "The Dark (Patterns) Side of UX Design," CHI '18, 2018, Paper 534, pp.1–14. DOI: 10.1145/3173574.3174108
実務資料
Harry Brignull, "Confirmshaming," Deceptive Patterns(事例21件を収録。MyMedic の通知許可画面の記録を含む) https://deceptive.design/types/confirmshaming/
Kate Moran & Kim Flaherty「Stop Shaming Your Users for Micro Conversions」Nielsen Norman Group、2017年4月30日(Sears.com、Women's Health などの実例を記録。この種のリンクを manipulink と呼んでいる) https://www.nngroup.com/articles/shaming-users/







