デジタルサービス

ゲームの広告に×ボタンがない?閉じれない仕組みの存在理由と違法性

森本 恭平更新 約5分
ゲームの広告に×ボタンがない?閉じれない仕組みの存在理由と違法性
目次 · Contents

アプリやウェブサイトのゲームを利用しているときに、「閉じれない広告」が出てきたという経験のある人たちもいるはずです。冷静に考えて、「こんな詐欺みたいな広告表示って許されるの?」と疑問に思いますよね……。

この記事では、ゲームの広告に×ボタンがないインターフェースについて考察しています。また、閉じれない仕組みの存在理由と違法性にも言及しているので、気になる方は参考にしてみてください。

ゲームの広告に×ボタンがない?

広告のイメージ

通常、無料のゲームや情報サイトには、広告が設置されています。広告費を収入源としているから利用者からお金を取らずに済むわけです。パソコンやスマホに表示される広告には、閉じるボタンが実装されています。×ボタンを押すことでコンテンツ利用の継続できます。これが一般的なインターフェースです。

しかし、なかには、広告内に×ボタンがない場合があります。そのパターンは大きく3つに分かれています。

広告内に×ボタンがない形式

第1に、広告を視聴しないと×ボタンが表示されない形式です。コンテンツを利用するには、一定時間の視聴を受け入れなければなりません。このとき、ユーザーから「広告を視聴してコンテンツを利用します」などの同意を得ている場合、GoogleやAppleの規約に違反しません。

第2に、×ボタンが認識しづらい形式です。例えば、色が薄かったり、サイズが極端に小さかったりするなど、パッと見では「閉じるボタン」だと判断できないデザインが施されています。

第3に、×ボタンを押したら他のページが開く形式です。×ボタンを装って別なサイトのリンクを仕込んでいるのは、明らかな騙し行為です。遷移先がサポート詐欺などの導線になっているケースもあるので、くれぐれも注意してください。

※もし、このような広告で金銭トラブルが起きたときは速やかに専門家や専門機関に相談してください。

【消費者ホットラインの詳細情報】

https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/

閉じれない仕組みの存在理由

デジタルサービスに実装されている閉じれない広告の仕組みは、事業者が収益を得るために存在します。

繰り返しになりますが、無料で提供されているゲームや情報サイトは、ユーザーからお金をもらう代わりに「時間」を得ることで、それを広告収入に還元しています。

一般的に、広告収入は表示時間、クリック数、商品やサービスの利用が条件になっています。

けれども、利用者からすれば、広告はゲームや情報にアクセスするのに邪魔な存在です。実際、広告の煩わしさを回避するために、ブロッカーを有料で入れている人たちもいます。

そうなると、事業者は収益を上げることができなくなります。それを避けるためにも、1秒でも長く広告を表示させたいし、1回でも多くクリックしてもらうために、ダークパターンに手を染める人たちもいるわけです。

なかには、最初から荒稼ぎ目的で閉じれない広告を実装したゲームや記事を作る人たちもいるでしょう。もしかしたら、この層のほうが多い可能性すらあります。

いずれにしても、「閉じれない広告」の存在理由は、利用者にとって邪魔な広告を無理矢理にでも表示させてお金を稼ぐためなのです。

閉じれない仕組みの違法性

なお、×ボタンのない閉じれない広告は「利用者を騙す行為として違法なのではないか?」と疑問を持つ方もいるかもしれません。

これに関しては、現行法には、「広告に閉じるボタンを付けなければならない」という条文はありません。ここでは、関連性の高い景品表示法、特定商取引法、消費者契約法の3つの法律から違法性の該当可否を検討します。

※ただし、筆者は弁護士ではないので、法律判断の詳細は専門家に必ず確認してください。

閉じられない広告は、どの法律の射程にも入りにくい
法律 その法律が対象にしていること 閉じられない広告が当てはまりにくい理由
景品表示法第2条第4項・第5条 事業者が自分の商品・役務の内容や取引条件について行う表示 閉じられるかどうかは、商品の内容でも取引条件でもない
特定商取引法第11条・第12条 通信販売の販売条件などについての広告表示と、誇大広告 対象は表示の内容。広告の閉じやすさは含まれない
特定商取引法第12条の6 申込みの手続が表示される画面(条文では映像面)の表示 対象は申込みの画面。プレイ中に割り込む広告はその場面ではない
消費者契約法第4条 誤認や困惑によってした、契約の申込み・承諾の意思表示 広告が閉じられないこと自体は契約ではない
ステマ規制令和5年内閣府告示第19号 事業者の表示なのに、第三者の表示のように見えるもの 広告だと分かる広告は対象外と運用基準が明記
条文は e-Gov 法令検索、告示および運用基準は消費者庁の公表資料により、2026年9月18日に確認。なお国の検討会は2026年9月10日の中間取りまとめで、現行法は「現状のインターネット取引に対応できるほど明確なものとなっていない部分がある」とし、「消費者を威迫、迷惑又は不安を覚えさせる等の攻撃的手法を用いた表示については、規制の対象とされていない」と記しています。この表は各法令が何を対象にしているかの整理であって、個別の事案についての法的判断ではありません。

なお、2026年9月10日に公表された「デジタル取引・特定商取引法等検討会 中間取りまとめ」には、現行法は「現状のインターネット取引に対応できるほど明確なものとなっていない部分がある」とあり、続けてこう書かれています。

消費者を威迫、迷惑又は不安を覚えさせる等の攻撃的手法を用いた表示については、規制の対象とされていない。

消費者庁「デジタル取引・特定商取引法等検討会 中間取りまとめ」(令和8年9月10日、全30ページ/PDF 552KB)8ページ「2 広告場面における意思決定を誘導する手法への対応(1)現状と課題」。

そのうえで、ダークパターンは多様で個別に列挙し尽くすのは難しいとして、「一定程度包括的な規律」の検討を求めています。つまり、現時点では制度が追いついていない状態なわけです。閉じられない広告に違和感を持つことと、それが違法であることとは、まだ別の話になっています。

なお、ここに書いたのは各法令が何を対象にしているかの整理であって、個別の事案についての法的判断ではありません。筆者は弁護士ではありません。実際に被害に遭われた場合や、違法かどうかの判断が必要な場合は、詳細を弁護士にご確認ください。

お金の代わりに時間を渡している

無料のゲームや情報コンテンツは、お金の代わりに時間を受け取ることで成り立っています。これ自体は、取引として理解できます。広告を見る時間と引き換えに遊ぶ場所が無料で開かれている。実際、このモデルはインターネットのコンテンツで広く採用されています。

しかし、時間が収入源に大きく影響を与える以上、それを得るために手段を選ばない事業者もいます。「閉じれない広告」をはじめとするダークパターンの採用は、その典型例です。

難しいのは、それ以外に売上を出す方法がないがゆえに修正インセンティブが働かないことです。実際、無料系のデジタルサービスは「お金を払ってまでは使わない」という前提のもと成り立っているものも数多く存在します。単一の収益モデルが、そこにネガティブな影響のある選択肢を取るとは思えません。

だからこそ、規制をかける以外に抑制の手段がないと思います。「ちょっとした暇つぶしができればよい」という隙間のようなニーズとそれを満たす手段の関係は、無関心と無責任が蔓延るにはちょうどよい空間なのかもしれません……。

出典

公的機関・法令

デジタル取引・特定商取引法等検討会「デジタル取引・特定商取引法等検討会 中間取りまとめ」(令和8年9月10日公表、全30ページ。8ページ「2 広告場面における意思決定を誘導する手法への対応(1)現状と課題」から引用) https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/meeting_materials/review_meeting_005/assets/consumer_transaction_cms101_260910_01.pdf

消費者庁「デジタル取引・特定商取引法等検討会」(上記中間取りまとめの掲載ページ) https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/meeting_materials/review_meeting_005/

e-Gov 法令検索「不当景品類及び不当表示防止法」(昭和三十七年法律第百三十四号。第2条第4項の「表示」の定義、第5条の不当な表示の禁止) https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000134

e-Gov 法令検索「特定商取引に関する法律」(昭和五十一年法律第五十七号。第11条・第12条の通信販売の広告に関する規定、第12条の6の特定申込みの確認画面に関する規定) https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057

e-Gov 法令検索「消費者契約法」(平成十二年法律第六十一号。第4条の取消権) https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000061

消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年3月28日内閣府告示第19号。いわゆるステルスマーケティング規制の告示) https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/public_notice/assets/representation_cms216_230328_07.pdf

消費者庁「消費者ホットライン」(電話番号188。最寄りの消費生活センター等を案内する窓口) https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/

プラットフォームの規約

Google「広告」Play Console ヘルプ(「混乱させる広告」「質の高い広告エクスペリエンス」の各項。全画面インタースティシャル広告の15秒の規定と、明示的にオプトインするリワード広告を適用外とする規定、および「偽りの閉じるボタン」を違反例とする記述。引用はGoogleによる日本語版の表記のまま) https://support.google.com/googleplay/android-developer/answer/9857753?hl=ja

Apple「App Reviewガイドライン」2.5.18 広告(最終更新日2026年6月8日。「操作しやすく見やすい、十分な大きさの『閉じる』ボタンや『スキップ』ボタン」の要求、および不適切な広告を報告できる機能の実装義務。引用はAppleによる日本語版の表記のまま) https://developer.apple.com/jp/app-store/review/guidelines/