
SNSが当たり前のように使われるようになった今、無限スクロールは身近なユーザーインターフェースです。スワイプし続けるうちに、自分好みのコンテンツが出てくる。まるでスロットゲームをやっているような感覚で、あっという間に時間が溶けていきます。
人々の可処分時間を広告価値に変換するビジネスモデルでは、無限スクロールは利益を生み出すドル箱と言っても過言ではありません。改めて、この技術はだれによって開発されたのでしょうか?
この記事では、無限スクロールの基本概要について説明しています。また、開発者が後悔している理由や規制の可能性にも触れているので、参考にしてみてください。
無限スクロールとは?
無限スクロールとは、ウェブページをスクロールするたびに新しいコンテンツが自動的に読み込まれて、終わりなく表示され続けるユーザーインターフェースです。ソーシャルメディアのショート動画コンテンツやおすすめの投稿など、To Cサービスで広く用いられています。具体的には、次のような仕様となります。
無限スクロールの発明者
無限スクロールを発明したのは、アメリカ出身のUIデザイナーとして有名なエイザ・ラスキンです。プロフィールは以下のとおりです。
エイザ・ラスキン(Aza Raskin、1984年生)は米国のデザイナー・起業家。Macintosh開発を率いたジェフ・ラスキンの息子で、シカゴ大学で数学と物理学を修めた。Humanized、Songza、Massive Healthの3社を創業・売却し、Mozilla Labsではクリエイティブ責任者としてFirefoxのUXを主導。2006年に「無限スクロール」を考案した人物として知られるが、その中毒性を後に公に悔い、2018年にトリスタン・ハリスらとCenter for Humane Technologyを共同設立した。Netflix『監視資本主義』に出演し、ポッドキャスト「Your Undivided Attention」を共同ホスト。現在はAIで動物の言語解読に挑むEarth Species Projectの共同創業者兼Chief Explorerで、2026年SXSWの基調講演者にも選ばれている。
現在、ラスキンは人間が人間らしくいられるためのテクノロジーのあり方を探求しており、その専門家として広く活動しています。
無限スクロールの開発で後悔している理由
無限スクロールが想定していた本来の目的は、ユーザーが新しい情報を得るためにウェブページを何度も更新せずに済むための補助機能でした。いわゆる「次へ」を押さなくても、コンテンツを閲覧できるのは便利だという発想だったわけです。
けれども、無限スクロールは人々をサポートするのではなく、アテンションエコノミーという経済モデルにおいて人々の可処分時間を金銭に変換するための支配的な手段として使われています。これに関して、ラスキンは次のように述べています。
"And when I was making it, I was really thinking about how can I reduce friction. And what I was blind to was the way that all of my best intentions were sort of irrelevant in the face of this machine with an incentive now to capture human attention."訳:作っていたときの私は、どうすれば摩擦を減らせるかだけを考えていた。私が見えていなかったのは、人間の注意を捕捉するインセンティブを持つこの機械の前では、私の最善の意図などおよそ無関係だった、ということだ。
道具の価値は使い手によっていくらでも変容されます。アインシュタインが自分の理論が核兵器開発に応用されたことを悔いたように、ラスキンもまた無限スクロールが人類に与える負の影響を嘆いていました。具体的に言うと、無限スクロールは次のようなネガティブをもたらしたと指摘しています。
本人も正確な数値は覚えていないと断っていますが、一説によると「毎月50万人分の人生が無限スクロールで消費されている」と言われています。「終わりがこない仕組み」は新しい何かを始めるきっかけを奪います。まさに、アテンションエコノミーを成立させるにはもってこいの道具になってしまったわけです。
無限スクロールが規制される可能性はあるのか?
それでは、無限スクロールのネガティブな影響から人々を保護するために、法的な規制がかけられる可能性はあるのでしょうか?
結論から言えば、日本でも本格的に検討が開始されています。
こども家庭庁の検討ワーキンググループは2026年7月、青少年インターネット環境整備法の見直しについて中間整理報告書をまとめました。そこでは、アルゴリズムによるレコメンド機能や無限スクロール機能が「注意を継続的に引きつける仕組みとして設計されている側面がある」とされ、横断的リスクに位置づけられています。
そのうえで、今後の制度は「情報のみならず、こどもに有害な影響を及ぼすおそれのある機能にも着目する必要がある」とし、「情報に加えてサービスの機能や設計も視野に入れた包括的な制度体系への転換」を検討するとしました。
SNS等の事業者には、リスク評価・保護措置・透明性確保・継続的な改善を一体的に促す仕組みが挙げられ、行政上の措置と罰則の検討にも触れられています。EUがデジタルサービス法で採った構えと、ほぼ同じです。
最終報告は2026年12月目途。法改正は、令和9年の次期基本計画の策定までに必要性を含めて検討する、という段階にあります。
無限スクロールを含むダークパターンは行動科学に基づいてデザインされているがゆえに、個人の注意力を向上させるだけでは抗いがたいという現実を踏まえると、問題の所在を「設計側」に置いたうえで、そのあり方にタガをはめるしかありません。
もちろん、道具は使い方次第でプラスにも、マイナスにもなるものの、ダークパターンが利益に直結する以上、事業者の善意に期待はできません。そもそも、事業者側に悪意があるとは限らず、その影響を適切に評価できていない可能性もあります。だからこそ、法的にきちっとルールを定めて、社会がテクノロジーと倫理のバランスをコントロールしたほうがよいでしょう。
搾取の道具になった
ラスキンが述べているように、無限スクロールは人々の手間を解消するための道具として誕生しました。
しかし、人々のアテンションをお金に変えるビジネスモデルにおいて、無限スクロールは利用者の時間を少しずつ、そして確実に奪うための搾取的な道具になっています。そこに、個人の趣味や嗜好に適したコンテンツを提案する機能を掛け合わせれば、魅力的な「底なし沼」が完成します。
残念ながら、ほとんどの道具は使い方をコントロールできません。
そのため、一定の強制力を働かせる法的な線引きが必要になります。EUやオーストラリアでは、すでにダークパターンのリスクを踏まえて、SNSを代表とするデジタルサービスを規制する取り組みが活発化しています。今後の日本の動向を追い続けたいと思います。
出典
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こども家庭庁, 青少年インターネット環境の整備等に関する検討会等(2026年)https://www.cfa.go.jp/councils/internet-kaigi
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