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無限スクロールとは?開発者が後悔している理由と規制の可能性を検討

森本 恭平更新 約10分
無限スクロールとは?開発者が後悔している理由と規制の可能性を検討
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SNSが当たり前のように使われるようになった今、無限スクロールは身近なユーザーインターフェースです。スワイプし続けるうちに、自分好みのコンテンツが出てくる。まるでスロットゲームをやっているような感覚で、あっという間に時間が溶けていきます。

人々の可処分時間を広告価値に変換するビジネスモデルでは、無限スクロールは利益を生み出すドル箱と言っても過言ではありません。改めて、この技術はだれによって開発されたのでしょうか?

この記事では、無限スクロールの基本概要について説明しています。また、開発者が後悔している理由や規制の可能性にも触れているので、参考にしてみてください。

無限スクロールとは?

無限スクロールとは、ウェブページをスクロールするたびに新しいコンテンツが自動的に読み込まれて、終わりなく表示され続けるユーザーインターフェースです。ソーシャルメディアのショート動画コンテンツやおすすめの投稿など、To Cサービスで広く用いられています。具体的には、次のような仕様となります。

無限スクロールの見本
おすすめ
※ 説明のために作成した見本です。実在のサービスの画面ではありません。並んでいるのは8件だけで、あとは同じものが繰り返し流れています。それでも終わりは来ません。読みたいときは、画面に触れると止まります。

無限スクロールの発明者

無限スクロールを発明したのは、アメリカ出身のUIデザイナーとして有名なエイザ・ラスキンです。プロフィールは以下のとおりです。

エイザ・ラスキン(Aza Raskin、1984年生)は米国のデザイナー・起業家。Macintosh開発を率いたジェフ・ラスキンの息子で、シカゴ大学で数学と物理学を修めた。Humanized、Songza、Massive Healthの3社を創業・売却し、Mozilla Labsではクリエイティブ責任者としてFirefoxのUXを主導。2006年に「無限スクロール」を考案した人物として知られるが、その中毒性を後に公に悔い、2018年にトリスタン・ハリスらとCenter for Humane Technologyを共同設立した。Netflix『監視資本主義』に出演し、ポッドキャスト「Your Undivided Attention」を共同ホスト。現在はAIで動物の言語解読に挑むEarth Species Projectの共同創業者兼Chief Explorerで、2026年SXSWの基調講演者にも選ばれている。

現在、ラスキンは人間が人間らしくいられるためのテクノロジーのあり方を探求しており、その専門家として広く活動しています。

無限スクロールの開発で後悔している理由

無限スクロールが想定していた本来の目的は、ユーザーが新しい情報を得るためにウェブページを何度も更新せずに済むための補助機能でした。いわゆる「次へ」を押さなくても、コンテンツを閲覧できるのは便利だという発想だったわけです。

けれども、無限スクロールは人々をサポートするのではなく、アテンションエコノミーという経済モデルにおいて人々の可処分時間を金銭に変換するための支配的な手段として使われています。これに関して、ラスキンは次のように述べています。

"And when I was making it, I was really thinking about how can I reduce friction. And what I was blind to was the way that all of my best intentions were sort of irrelevant in the face of this machine with an incentive now to capture human attention."訳:作っていたときの私は、どうすれば摩擦を減らせるかだけを考えていた。私が見えていなかったのは、人間の注意を捕捉するインセンティブを持つこの機械の前では、私の最善の意図などおよそ無関係だった、ということだ。

Aza Raskin, Pioneers of AI(Masters of Scale 収録・Rana el Kaliouby 司会)"I regret it: the founder of infinite scroll was blind to how it would be used"

道具の価値は使い手によっていくらでも変容されます。アインシュタインが自分の理論が核兵器開発に応用されたことを悔いたように、ラスキンもまた無限スクロールが人類に与える負の影響を嘆いていました。具体的に言うと、無限スクロールは次のようなネガティブをもたらしたと指摘しています。

無限スクロールの発明者は、何を問題だと言っているか エイザ・ラスキン(Center for Humane Technology 共同創業者)が公開の場で語った、無限スクロールが人と社会に及ぼす影響についての発言です。同趣旨の発言は1項目に統合しています。訳は筆者によります。 Quotes ── 2018–2026年の発言から
指摘層と、その要点 本人の言葉訳と原文 出典媒体と時期
認知停止の合図が消えるページの終わりという「ここで止まる」きっかけを、設計として取り除いた。 ワイングラスが延々と注ぎ足されるなら、止まる合図がないので人はただ飲み続ける。無限スクロールがやっているのはそれだ。“If the glass of wine continually refills, you don’t really have that stopping cue so you just keep going. That’s what infinite scroll does.” IxDAStories Podcast2021年1月同趣旨:NPR 2026年4月
認知衝動に理性が追いつかない判断が働く前に次のコンテンツが届くため、意識的な離脱が起こらない。 衝動に脳が追いつく時間を与えなければ、人はただスクロールし続ける。“If you don’t give your brain time to catch up with your impulses, you just keep scrolling.” BBCPanorama 関連報道2018年7月
認知ドゥームスクロールの発生源悪い知らせを延々と追う行動は、この設計がなければ成立しない。 私たちがドゥームスクロールと呼ぶあの現象は、無限スクロールなしには存在しない。“That thing we call doom scrolling would not exist without infinite scroll.” TEDRethinking2024年5月
構造個人と企業の非対称性利用者の自制心の問題ではなく、心理学を用いた大規模な最適化の結果である。 画面の向こう側には数千人のエンジニアがいて、あなたをそこに留めるために、あなた自身の心理を使って何億回ものテストを重ねてきた。“On the other side of that screen are thousands of engineers who have done hundreds of millions of tests using your own psychology to keep you there.” NPRThe Indicator2026年4月同趣旨:BBC 2018年7月
構造中毒性は意図して設計されている偶然の副作用ではなく、離脱しにくさを最大化する方向に調整されている。 まるで行動的コカインを、インターフェース中にばら撒いているようなものだ。“It’s as if they’re taking behavioural cocaine and just sprinkling it all over your interface.” BBCPanorama 関連報道2018年7月
構造善意はインセンティブに負ける発明者の意図と無関係に、収益の構造が用途を決めていく。 インセンティブは意図を食い尽くす。“Incentives eat intentions.” NPRThe Indicator2026年4月
帰結設計者自身も抜け出せなかった仕組みを知る当人ですら、意志だけでは距離を取れなかったと述べている。 私自身、自分の依存を断つためにソフトウェアを書かなければならなかった。“I actually had to write software to break my own addiction.” NPRThe Indicator2026年4月
帰結時間が「人生」単位で失われる失われた時間の総量を、人ひとりの生涯に換算して語っている。 私の発明は機械に吸い上げられ、いまや1日あたり10万人分の人生というオーダーで浪費させている。ぞっとする話だ。“My invention got sort of sucked up by a machine and wastes on the order of a hundred thousand human lifetimes per day now. It’s horrendous.”話者の概算値。n・算出手法の公開なし TEDRethinking2024年5月別数値:月50万人分(Masters of Scale)/1日20万人分(The Telegraph 2019年)
社会神経系の反応を売るビジネスモデル怒りや反射的な注目を収益源とする構造そのものを問題としている。 根本的に、人間の神経系から反応を引き出すことを目的としたビジネスモデルだ。人々を怒らせる。“A business model that is fundamentally about getting reactions from the human nervous system. You get people angry.” TEDRethinking2024年5月
社会分極化から民主主義の後退まで神経系を反応的にした帰結として、社会レベルの劣化が予測可能に生じるとする。 分極化が起き、ナルシシズムが増し、怒りが増え、やがて民主主義が後退する。“We’re gonna get polarization, narcissism, more outrage, eventually democratic backsliding.” TEDRethinking2024年5月
責任無理解な設計が情報環境を壊すアルゴリズムの心理的効果を理解しないまま設計することの危うさを説く。 トレンド・アルゴリズムに内在する錯誤的真実効果を理解していなければ、無責任な設計をしてしまい、私たちの情報エコロジーを壊しうる。“If you don’t understand the illusory truth effect inherent in trend algorithms, you can design irresponsibly and break our information ecology.” IxDAStories Podcast2021年1月
対策摩擦を意図的に戻す彼が挙げる具体策。反射ではなく反省の余地を、設計に残すという発想。
  • 無限スクロールを廃し、続きを読むにはクリックさせる
  • 動画の自動再生を切る
  • 読み込みをあえて遅くし、反射ではなく反省の余地をつくる
発言の要約。直接引用ではありません
NPRThe Indicator2026年4月
読むときの留保
数値の素性
「人生◯万人分」はいずれも本人の概算であり、標本数・算出手法は公開されていません。査読を経た推計値ではなく、規模感の比喩として扱う必要があります。数値は場によって振れています(1日10万人分/月50万人分/1日20万人分)。
発明の帰属
英語版 Wikipedia「Infinite scrolling」は、Microsoft が2006年に特許を出願し同年3月に実装を公開しており、ラスキンがそれに先行したという証拠はない、と記載しています。「発明者本人の告白」という枠づけで引用する場合は注意が必要です。
BBC の発言
BBC の原記事は現在直接参照できないため、複数の二次報道で文言が一致する部分のみを採録しています。
出典

本人も正確な数値は覚えていないと断っていますが、一説によると「毎月50万人分の人生が無限スクロールで消費されている」と言われています。「終わりがこない仕組み」は新しい何かを始めるきっかけを奪います。まさに、アテンションエコノミーを成立させるにはもってこいの道具になってしまったわけです。

無限スクロールが規制される可能性はあるのか?

それでは、無限スクロールのネガティブな影響から人々を保護するために、法的な規制がかけられる可能性はあるのでしょうか?

結論から言えば、日本でも本格的に検討が開始されています。

こども家庭庁の検討ワーキンググループは2026年7月、青少年インターネット環境整備法の見直しについて中間整理報告書をまとめました。そこでは、アルゴリズムによるレコメンド機能や無限スクロール機能が「注意を継続的に引きつける仕組みとして設計されている側面がある」とされ、横断的リスクに位置づけられています。

そのうえで、今後の制度は「情報のみならず、こどもに有害な影響を及ぼすおそれのある機能にも着目する必要がある」とし、「情報に加えてサービスの機能や設計も視野に入れた包括的な制度体系への転換」を検討するとしました。

SNS等の事業者には、リスク評価・保護措置・透明性確保・継続的な改善を一体的に促す仕組みが挙げられ、行政上の措置と罰則の検討にも触れられています。EUがデジタルサービス法で採った構えと、ほぼ同じです。

最終報告は2026年12月目途。法改正は、令和9年の次期基本計画の策定までに必要性を含めて検討する、という段階にあります。

無限スクロールを含むダークパターンは行動科学に基づいてデザインされているがゆえに、個人の注意力を向上させるだけでは抗いがたいという現実を踏まえると、問題の所在を「設計側」に置いたうえで、そのあり方にタガをはめるしかありません。

もちろん、道具は使い方次第でプラスにも、マイナスにもなるものの、ダークパターンが利益に直結する以上、事業者の善意に期待はできません。そもそも、事業者側に悪意があるとは限らず、その影響を適切に評価できていない可能性もあります。だからこそ、法的にきちっとルールを定めて、社会がテクノロジーと倫理のバランスをコントロールしたほうがよいでしょう。

搾取の道具になった

ラスキンが述べているように、無限スクロールは人々の手間を解消するための道具として誕生しました。

しかし、人々のアテンションをお金に変えるビジネスモデルにおいて、無限スクロールは利用者の時間を少しずつ、そして確実に奪うための搾取的な道具になっています。そこに、個人の趣味や嗜好に適したコンテンツを提案する機能を掛け合わせれば、魅力的な「底なし沼」が完成します。

残念ながら、ほとんどの道具は使い方をコントロールできません。

そのため、一定の強制力を働かせる法的な線引きが必要になります。EUやオーストラリアでは、すでにダークパターンのリスクを踏まえて、SNSを代表とするデジタルサービスを規制する取り組みが活発化しています。今後の日本の動向を追い続けたいと思います。

出典

Montag, C., Lachmann, B., Herrlich, M., & Zweig, K., Addictive Features of Social Media/Messenger Platforms and Freemium Games against the Background of Psychological and Economic Theories, International Journal of Environmental Research and Public Health, 16(14), 2612(2019年)https://doi.org/10.3390/ijerph16142612

Gray, C. M., Kou, Y., Battles, B., Hoggatt, J., & Toombs, A. L., The Dark (Patterns) Side of UX Design, Proceedings of the 2018 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems(2018年)https://doi.org/10.1145/3173574.3174108

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Center for Humane Technology, Impact and Story(2018年設立)https://www.humanetech.com/impact-and-story

Masters of Scale, He Invented Infinite Scroll — and Says He Regrets It, Pioneers of AI(2026年5月)https://mastersofscale.com/video/he-invented-infinite-scroll-and-says-he-regrets-it/

Earth Species Project, Introducing Earth Species Project's New CEO(2026年3月4日)https://earthspecies.org/2026/03/04/introducing-earth-species-projects-new-ceo/

SXSW, SXSW Announces Keynote Speakers and Featured Sessions for the 2026 Conference(2025年12月)https://sxsw.com/wp-content/uploads/2025/12/SXSW-2026-KFS2-Announcement-Press-Release.pdf

こども家庭庁, 青少年インターネット環境整備法の在り方等に関する検討ワーキンググループ 中間整理報告書(令和8年7月31日)https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/7ce4fa4b-f167-4913-970e-d2fb48108e32/8e1e92bc/20260731_councils_internet-kaigi_39.pdf

こども家庭庁, 青少年インターネット環境の整備等に関する検討会等(2026年)https://www.cfa.go.jp/councils/internet-kaigi

日本経済新聞, SNS「無限スクロール」は有害 こども家庭庁、年齢制限はなお議論(2026年7月)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2788G0X20C26A7000000/